疲労検査

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疲労について

当院では「頑固で長引く疲労」つまりいわゆる「慢性疲労」の状態の方を対象に、客観的な検査と治療を重視して取り組んでおります。「慢性疲労」とは、医学的には「日常生活に支障が出るほどの疲労が、睡眠・休養などにより回復せず6ヶ月以上続く」状態です。日本人を対象とした大規模調査では就労人口の約4割の方が「慢性疲労」の状態である事が判明しています。

一方で、紛らわしい用語として、「慢性疲労『症候群』」(筋痛性脳脊髄炎)という疾患名(病名)もあります。これは、慢性疲労の他、リンパ節の腫れ、咽頭痛、関節痛、微熱などの感染症様症状を6ヶ月以上伴うもので、原因不明ですが感染症やストレス、自己免疫が引き金となる慢性の難治性病態であると考えられています。(※以上の理由から、当院では治療対象外となりますのでご注意ください。)

前者の(比較的、健康な状態に近い)「慢性疲労」の方に関して、当院へ多くご来院頂いており、適切な客観的な検査をご用意させて頂いております。

疲労の検査について

疲労はなぜ起こるのか?それは基本的に、現代医学において疲労の根本原因として様々な過度のストレスや身体的負担の蓄積が挙げられ、それらによって脳や身体に過度の活性酸素(体のあちこちを傷つける、毒性の強い酸素の一種)が蓄積する事が原因とされています。
また、疲労には大きく分けて、脳疲労と身体疲労がありますので、問診によってある程度どちらの可能性が高いか判断をした上で、検査を実施致します。

1.脳疲労の検査

「脳疲労・ERP脳波検査」
価格:30,000円(税込)

「脳疲労」は脳内に活性酸素が過剰に溜まっている状態により引き起こされます。脳内の特に視床下部(自律神経の中枢で脳の中心部分)に蓄積した活性酸素を、前頭葉(脳の前方部分)で感知して「頭が疲れている」という疲労感につながると考えられています。この「脳疲労」の状態を調べる検査として医療現場で代表的に行われている検査として、ATMT(改訂版トレイルメイキングテスト)というものがあります。しかしさらに鋭敏かつ客観的・直接的に測定できる方法としてERP(事象関連電位)が挙げられます。ERPとは通常の脳波検査と違って、「急速に変化する音(音程や音量)などの刺激(専門用語で「オドボール課題」と言います)を与えた時に見られる、脳波の変化の状態、特にP300という陽性の波」を調べるもので、特殊な脳波検査のタイプになります。当院では、ERPを調べることにより、脳疲労の状態を客観的に測定致します。

(下のグラフ:FUTEK Electronics社・パンフレットより転載)

2.身体疲労の検査

「身体疲労・ベーシック尿検査」
価格:66,000円(税込)

身体疲労と一言でいっても、様々な原因により起こります。可能性のある様々な原因を、一度にカバーして調べられる様、当院では主に尿検査(在宅)を行い計測致します。(※不眠や夜間無呼吸が主な原因と考えられる場合は、睡眠検査(5晩・2晩)を勧める場合があります。)

疲労が溜まると、前述の活性酸素(体のあちこちを傷つける、毒性の強い酸素の一種)の蓄積により、身体内でミクロレベルでDNA(遺伝子)の損傷を起こします。その損傷を示す一つの物質として、「8ーOhDG(8ー水酸化グアノシン)」という、「傷ついたDNAの破片」が全身を巡ります。この物質は尿にも排出されますので、身体疲労度の指標として日本疲労学会としても、世界的にも認められている物質です。

私見ですが、「8ーOhDG(8ー水酸化グアノシン)」は、副次的な脳疲労の指標としても重視しています。活性酸素は脳内でも発生するからです。ただし、脳内炎症の反映であるキヌレニン回路(セロトニン合成経路の側副経路、つまり脇道に当たる回路です)における代謝物(キヌリン酸など)を脳疲労の指標として最も重視しています。尿検査でこれら全て測定可能です。

一方で、イミダペプチド(イミダゾール・ジペプチド)というアミノ酸の一種も、疲労により蓄積量が低下するために、身体疲労の客観的指標になりえます。 その他の原因として、「自律神経失調」や、「副腎疲労」(現代的なホルモンのアンバランスの一種)が挙げられます。前者・後者ともに、腸内環境や血糖値の乱れ、精神的ストレス・不眠など、共通の理由によって起こる事が多く、前者の「自律神経失調」はHRV(心拍変動)を通じて測定ができますが(自律神経外来の記事をご覧ください)、脳内のセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の体内での生産量を、尿中へ排泄されるそれらの代謝物として検出できます。

また後者の「副腎疲労」に関しては、尿中のコルチゾールやアルドステロン(低下により立ちくらみが起こります)という副腎皮質ホルモンの代表格2種を測定し評価をする事ができます。 さらに、ミトコンドリア(細胞内のエネルギー生産工場)の機能低下による疲労に関しては、加齢性の変化や重金属・有害化学物質(トルエン、スチレンといった有機溶剤等)の影響などにより、しばしば見られます。尿検査を通じて、コエンザイムQ10やクエン酸、ビタミンB群といったミトコンドリアの働きに欠かせない栄養素や、有害化学物質による代謝物も、同時に調べられます。その上、性ホルモン(女性ホルモン様作用を持つエクオールという物質で、男性においても疲労回復や前立腺の機能維持等に関わります。)も測定可能です。

説明が長くなりましたが、以上の様に多岐にわたる身体疲労の原因を、まずは突き止める事が重要です。それは複数かも知れませんし、1つかも知れません。原因さえ分かれば、治療や対策はそれらに対するアプローチになりますので、比較的容易です。


(図:身体疲労・ベーシック尿検査の結果レポートより)


(20-30mL程度の尿サンプルから、様々な疲労関連物質を調べることができます)
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